WB金融経済研究所 <活動報告014> PDF版(236KB)
令和4年12月20日
1. | 国際関係について わが国の国際関係の問題は、徹底的に絞り込めば結局「中国」ということになろう。 この中国との関係では、本年11月17日タイ・バンコクに於いて岸田総理と習近平主席との間で初めて対面での会談が行われた。メディアが伝えるところに従って会談内容を見ると、習主席が冒頭から大所高所から発言しているのに対し、岸田総理の発言は米国に引っ張られながら事前にメディア向けに予告した範囲どおりの実務型で、あれでは中国側も事後に何の分析も必要なかったであろうと推測したものであった。 習主席は、「中日両国は国際社会で極めて重要な存在である。従って両国が国際社会においてどのような考え方をもって行動していくかについて協力したいので、総理の考え方を知りたい。」と実に大所高所からの議論を展開してきた。 私は、習主席が折角このように誘ってきたのであれば、やはり岸田氏は、予め一寸した根回しのうえで南シナ海の岩礁埋立地や、それだけでは片手落ちゆえ、日本の尖閣列島も念頭に置きながら、「周辺国を含む日中両国関係には未解決の領土問題もあるので、それらの活用方法を議論する国際会議をそろそろ始めることは考えられないか」位の対応をしたらどうであったであろうかと考えたものであった。 |
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2. | わが国経済の再建について 日本経済は、「失われた20年」の後、安倍総理の再登場後のアベノミクスの10年を合わせて30年もの間、衰退を続けて来た。このうちアベノミクスの10年間には、金融政策で「リフレは貨幣問題であるゆえ、大胆な金融緩和こそ必要」との考え方に基づき、黒田日銀がその方向での政策を継続展開してきた。しかし結果は見てのとおりとなった。 アベノミクスの一環としての黒田バズーカが始まる前には、デフレの背景として、次のような実体経済上の問題を指摘する考え方もあった。 |
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(イ) | 中国の低賃金とそれが生み出す低価格商品の輸入の影響 (野口悠紀雄氏) |
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(ロ) | わが国の国際収支上、貿易収支の黒字より所得収支の黒字の方が多くなったことに明らかなとおり、新興国への投資増大の悪影響 (リチャード・クー氏) |
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(ハ) | わが国における高齢化の急進と出産率の低下により、人口が減少し、経済における需要の減少に繋がったこと (藻谷浩介氏) |
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(ニ) | わが国の労働慣行(終身雇用制)がグローバル化やIT革命に対し柔軟性に欠けていたため、労働生産性の低下を招いたこと (白川方明氏) |
(了)