WB金融経済研究所


WB金融経済研究所 <活動報告016> PDF版(150KB)

令和6年12月20日

令和6年末の随想


 何と言っても本年最後最大の驚きは、アメリカの大統領選挙においてD.トランプ氏が予想外の圧勝を果たしたことである。
 筆者は元来アメリカが偉大なのは、偏えに少数のエリートの存在の故であって、必ずしも国民の大多数の人々の貢献によるものではないとの見方の持主である。それ故、トランプ氏の再選は国民の民度からすれば当然とも言えると考えている。
 ところで、トランプ氏本人の政策の内容やそれの米国や世界への影響はどのようなものか、最近の言論界に現れた評価を見ておくこととする。
 第1はトランプ氏が二言目には口にする関税の引上げである。特に中国に対する関税引上げの場合、中国の対米輸出は打撃を受けるが、中国からの輸入の減少により、アメリカは経常収支の黒字化とそれによるドル高を招く。そして対中の関税引上げは、輸入先が日本に移り、日本経済にとってプラスになることもあり得るので、日本としてはその事態に備えておくことも必要である。
 第2は、同じく関税引上げに関してであるが、それが狙いどおり生産拠点の国内回帰をもたらすかである。
 米国の労働者を守るために、米国企業の対外直接投資を規制すれば、代わりに中国がアジア、アフリカ、中南米に足場を広げ、米国企業の市場占有率が地政学的影響力を失う懸念が生じることになる。トランプ氏の政策も良いことばかりではないことを重々考えて置かなければならないということである。
 さて、第3にはわが国の国内の問題を取り上げざるを得ない。わが国の国内最大の問題は、人口減少の問題である。
 人口減少をもたらしている要因については、最近も識者、専門家の分析が盛んに行われているが、これらの専門的分析を横に置きつつも、筆者は自らの人生経験から、わが国の人口減少の要因については、雇用形態との関係が最大の問題と考えているが、どうであろうか。
 よく知られている通り、雇用形態には正規雇用と非正規雇用がある。
また、見方を変えれば、メンバーシップ雇用とジョブ雇用があると言われる。ある企業に雇用されるという時、前者では一旦採用されれば、仕事は次々と必要に応じて変わり、定年まで雇用され続ける雇用であり、後者では採用されるのは、企業・会社ではなく、特別の仕事業務に就いて労働することであり、その仕事業務が必要でなくなれば、何時でも解雇されるというものである。そして前者はメンバーシップ型の雇用であり、後者はジョブ型の雇用であるとされる。
 そして、筆者は、上述の雇用形態と出生率とは強い関係があると考えるものである。端的に言って、正規雇用をされた若者は自分の人生について大まかな経済の目算が立つので、家族の形成にも見通しが立つわけであり、子どもの数も目算が立つのである。他方、非正規の場合にはそうはいかないことは、言わば分かり切ったこととなり、子どもの数も慎重にならざるを得ない。
 このようにして橋本内閣から小泉内閣にかけての労働法制の自由化は、わが国の人口政策としては、見事に失敗し、わが国の今日の苦境を招いたのである。
(了)


トップページに戻る